EXILEに三代目JSB、「LDH」は銀蝿一家、それとも石原軍団か。 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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EXILEに三代目JSB、「LDH」は銀蝿一家、それとも石原軍団か。

LDHはあくまでかっこよさが売り

 もっとも、商売上手という意味において、LDHのほうがスケールも安定感もはるかに大きい。銀蝿にはのちにレコード会社の社長になった者もいる一方で、覚醒剤で捕まった者もいて、一過性のブームしか作れなかった。これに対し、HIROを頂点としたLDHの体制は磐石だ。そのためか、あれだけ多くのメンバーがいながら、目立った不祥事もない。

 とはいえ、商売のなかには採算がちゃんと取れているのか、ビミョーなものもある。映画だ。なかでも最も力を入れていそうなアクション大作「HiGH&LOW」シリーズについては、先行して放送された連ドラが低視聴率だったにもかかわらず、かれこれ5年にわたって制作し続けている。「湯けむり純情篇」と題したコメディタッチのスピンオフもあり、もはや何でもありな状況だ。

 試しに「LDH 映画」で検索すると「大コケ」というワードが自動で出て来るほどなのだが、彼らはめげない。その理由はおそらく、こういうことだろう。

「この世に映画が誕生して124年・・・幾つもの作品が世界中の人々に感動と興奮を与えてきました。未来、過去、宇宙、仮想現実、、、『娯楽の王様』と言われる映画は人類の夢と想像を形にした"ロマン"そのものです」(LDH CLUB 映画部 活動コンセプトより)

 そう、彼らは映画こそ究極の男の「ロマン」と考えているのだ。そういうところは、あの集団に似ている気もする。石原軍団である。

 昭和のスター・石原裕次郎が自分のやりたい映画を思い通りに作るため、立ち上げた石原プロモーションは、資金の使い過ぎで倒産しそうになりながら、なんだかんだで彼の死後も存続してきた。そのロマンは事務所の後輩たちも受け継いでいるはずだが、いま実践しているのはむしろLDHの面々だろう。

 そして、同じロマンを持つゆえか、石原軍団にもやはり飲食にまつわる「お約束」がある。たとえば、若い男はとにかく食えというものだ。新人時代の石原良純なんて、地方ロケの宿泊先で裕次郎たちが勝手に頼んで余ったおにぎり約40個を食べさせられそうになった。さすがに食べきれないから、具だけ食べて、浴衣の袖の中におにぎりを隠し、隙を見て窓から捨てることに。これが舘ひろしに見つかり、殴られたという。

 そんな上下関係の体育会っぽさや、ファッションの傾向など、LDHは銀蝿一家より、こちらに近いようにも思われる。恋愛についても、石原軍団の神田正輝が松田聖子の最初の夫となったように、HIROが上戸彩、TAKAHIROが武井咲をそれぞれモノにした。また、NAOTOは加藤綾子と熱愛中だし、白濱亜嵐はかつて峯岸みなみを丸坊主にした男である。

 そういえば、TAKAHIROは「EXILE Vocal Battle Audition 2006」で選ばれ、LDH入りした。メンバー脱退により開催されたオーディションでチャンスをつかんだわけだが、じつはその前に別のかたちでデビューするはずだった。「歌スタ!!」のオーディションで審査員でもある作曲家・林哲司に認められ、デビューが内定。さらに、ミュージカル「テニスの王子様」にも出演が決まっていたにもかかわらず、EXILEのオーディションが行なわれることを知り、どちらも辞退したのだ(ミュージカルにいたっては、公演開始10日前のドタキャンだった)。要は、鞍替えしたわけである。

 その判断について「1秒も迷わなかった」という彼は、こんな名言を残した。

「歌手になりたい、というより、EXILEになりたかった」

 LDHが好きな人たちにとっては、そういうものなのだろう。ある意味、そこは芸能界とも違う、特別な世界なのだ。

 惜しむらくはその特別な世界の面白さが、なかなか伝わりにくいことだ。これが石原軍団だと、うってつけのスポークスマンがいる。石原プロから独立し、バラエティタレントとして成功、しかも創業者の甥ということで何を言っても許される良純だ。

 さすがに彼ほどの人材は望むべくもないが、この際、元メンバーの暴露本でもいいから、その世界をいろいろ教えてほしいものだ。冒頭の飲み会エピソードみたいな話はまだまだあるはず。それを知れば「紅白」などでのパフォーマンスももっと楽しめること請け合いである。

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『痩せ姫 生きづらさの果てに』
エフ=宝泉薫  (著)

 

女性が「細さ」にこだわる本当の理由とは?

人類の進化のスピードより、ずっと速く進んでしまう時代に命がけで追いすがる「未来のイヴ」たちの記憶
————中野信子(脳科学者・医学博士)推薦

瘦せることがすべて、そんな生き方もあっていい。居場所なき少数派のためのサンクチュアリがここにある。
健康至上主義的現代の奇書にして、食と性が大混乱をきたした新たな時代のバイブル。

摂食障害。この病気はときに「緩慢なる自殺」だともいわれます。それはたしかに、ひとつの傾向を言い当てているでしょう。食事を制限したり、排出したりして、どんどん瘦せていく、あるいは、瘦せすぎで居続けようとする場合はもとより、たとえ瘦せていなくても、嘔吐や下剤への依存がひどい場合などは、自ら死に近づこうとしているように見えてもおかしくはありません。しかし、こんな見方もできます。

瘦せ姫は「死なない」ために、病んでいるのではないかと。今すぐにでも死んでしまいたいほど、つらい状況のなかで、なんとか生き延びるために「瘦せること」を選んでいる、というところもあると思うのです。
(「まえがき」より)

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宝泉 薫

ほうせん かおる

1964年生まれ。主にテレビ・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版する。2016年には『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)が話題に。近刊に『あのアイドルがなぜヌードに』(文春ムック)『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、最新刊に『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)がある。ツイッターは、@fuji507で更新中。 


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瘦せ姫 生きづらさの果てに
  • エフ=宝泉薫
  • 2016.09.10